初めてのブログ参加なので、産婦人科らしいお話をさせてください。
これは母子手帳です。

母子手帳とは正式名称を『母子健康手帳』と言い、昭和17年に作られた『妊産婦手帳』が原型となっています。
健康管理に役立てることを目的に、妊娠中から分娩の記録、子どもが満6歳になるまでの診察や治療、検診、保健指導などを記録します。母子手帳1冊で今までの健康状態を把握できるのが最大の特徴です。
もともとは日本独自のシステムでしたが、その有用性から現在では海外でも取り入れられています。
母子手帳は偉大です。
もし母子手帳があれば、そっと開いてみてください。
赤ちゃんがお腹に宿った時の気持ち、妊娠中に大変だったこと、嬉しかったこと。
母子手帳には、お母さんの想いが溢れています。
妊娠・出産は奇跡の連続です。
当たり前に生まれてくる命はひとつもありません。
何が起きてもおかしくない、色々な困難を乗り越えて命は誕生します。
お母さんとなる女性はみんな、赤ちゃんのために命がけでお産に立ち向かっていきます。
普段なら耐えられない痛みも、赤ちゃんのためだから頑張れるのです。
そして赤ちゃんは、生まれた喜びを全身で表すかのように元気な産声を上げます。
何度立ち会っても、その一瞬は劇的な時間。
出産を終えたお母さんが優しいまなざしで我が子に語りかけ、隣でお父さんが号泣…そんな光景を見るたびに、私たちも一緒に感動で涙したものです。

ぜひ母子手帳を開いて、生まれた時の話をお子様にお話ししてください。
誕生日は良い機会です。
「何年前の何時頃にあなたは生まれたのよ。その時、お母さんはね…」
祖父母や兄弟姉妹、生まれたときの家族の様子を話すのもいいですね。
名前の由来を話すのもお勧めです。
「他にこんな候補もあったよ。男の子ならこの名前。女の子だったらこの名前で迷った…」
「こんな願いをこめて名前をつけたのよ…」
子どもは自分の誕生を楽しみに待ち望んでくれていたと嬉しく思うでしょう。
自分がこの世に誕生した時の話は、どんな高価な誕生日プレゼントより、きっと一生、子どもの心に残ると思います。
たとえ、子どもが飽きたと言っても、負けずにお話ししてください。
毎年同じ話でいいのです。成長とともに汲み取る意味が変わってくるはずです。

生まれた後はいろいろな人生があります。辛いことも、理不尽なこともあるでしょう。
でも、お腹の中にいる間、大切にされてきたことは事実です。そして、母親が命をかけて産んでくれたから、今ここに存在しているのです。
現在、伏古レディースクリニックでは分娩をお休みしていますが、希望の分娩施設にご紹介となる妊娠30週頃までの間、一人ひとり大切に妊婦検診をさせていただいております。
「元気に生まれて来られますように」
母子手帳には、沢山の人の祈りと想いが込められています。
